転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


16 村の危機?



 次の日、キャリーナ姉ちゃんにねだられて僕は覚えたばかりの索敵を教えたんだ。
 けど、

「まわりのまりょくなんて解んないよ!」

 と、いくら教えてもできなくて、最後にはそう言って怒られてしまった。

 僕は初めから魔力を自由に動かせたけど、キャリーナ姉ちゃんは自分の中の魔力でさえ僕が数日間体の中の魔力を動かして教えないと動かせるようにならなかったから、この索敵の為に周りの魔力を動かす訓練をしないとできるようにならないのかも。
 そう思った僕はキャリーナ姉ちゃんにそう伝えると、

「そうなんだ。う〜ん、ならもういいや」

 そう言ってあっさりあきらめてしまった。
 お姉ちゃんが言うには、もうこの村の周りならどこで待ち伏せすれば獲物が来るかある程度解ってるし、森の中は大人たちと一緒なら自分で獲物を探す必要がないからなんだってさ。
 なるほど、確かに僕だってどこで獲物を取ればいいか解っているのならこんな面倒な方法を考えようなんて思わなかったもん、お姉ちゃんの言う事も解るよ。

 と言うわけでお姉ちゃんとはお別れして、僕は索敵の練習をする為に村の外へ。
 村の中だとすぐに人に当たってしまうからどこまで届くか解らないんだよね。



 畑を抜け、村の周りの策を抜けた所で僕は前方に向かって魔力の波を放ってみる。
 ……しばらく待ってみるも反応はなし。

「よくかんがえたら、これだとどこまでとどいているのかわからないや」

 波である以上遠くまで行けば弱くなるだろうし、その波が帰ってくるとなると、とどく範囲の半分くらいの距離じゃないと索敵の効果はないのかもしれない。

 確かめなきゃ。

 そう思った僕は空を見上げた。
 そしてしばらくした頃。

「あっ見つけた!」

 遠くに飛ぶ、鳥を発見! そのまま今いる場所に波を放つと外れてしまうから、鳥が飛ぶ前方に少し広めの扇方になるよう意識をして周りの魔力を波に変えて放射した。

 ちょっと遠すぎるかなぁ? なんて事を考えていたんだけど、どうやら波は無事に鳥のところまでとどいたらしくて、僕の所まで戻ってきた。
 そしてその波にはちゃんと鳥の魔力が含まれているのも確認できた。

「これだけはなれていても、とどくんだ」

 目標にした鳥の大きさを知らないから正確な距離は解らないけど、魔物と言うわけじゃないから特別大きな鳥でも無いだろうし、多分300メートルは離れていないんじゃないかな? でもそれだけ遠くにいる獲物でも感知できる事が解ったから、僕は次に村から離れるように歩きながら色々な方向に魔法の波を放ち始めた。
 ただ、今度は扇状ではなく直線でだけど。

 鳥の時と違ってどこにいるか解らないのに魔力の波を扇状に広げたら、たとえ波が帰って来たとしても離れれば離れるほどどこにいるか解らなくなっちゃうからね。

 将来的には360度全方向に放っても解るようにしたいと思うけど、今の僕ではそんな事はできないから今は方向だけに絞って探知するんだ。

 こうして両手を広げたくらいの幅で、場所や方向を変えては魔力操作を何度か繰り返す。
 すると。

「あっ、なにかいるっぽい」

 10分ほど歩いて村からそこそこ離れたころ、人や鳥とは違う何かの魔力が含まれた波が帰って来た。
 と言う事は、この方向に向かえば何かしらの獲物がいるんだと思う。

「やった! やっとみつけた」

 その帰って来た反応に気を良くした僕は、喜び勇んでそちらの方に駆け出した。
 ところが。

「あれ? いないや。どこかへ、いっちゃったのかなぁ」

 結構遠くまで来たつもりだけど、一向に獲物の姿は見えず。
 そこでもう一度周りの魔力を操って波を飛ばしてみると、僕が来た方とは反対側から反応が帰って来た。

「もっとむこうなの? これはもしかして、すごくとおくでもまりょくのなみがかえってくるのかも」

 それこそ2〜3キロ先でも波が帰ってくるのならこの方法は使えない。
 将来的にこの索敵方法を使いこなせるようになって獲物がどこにいるのかまで正確に把握できるようになったら話は別だけど、これがただ方向が解るだけだったら一日中走っても獲物にたどり着かないかも知れないもん。

 折角凄い技術が手に入ったと思ったのに、使えないのかもしれないと思ってがっかりする僕。

「でもまほうだって、さいしょからうまくいったわけじゃないもん。これもれんしゅうすれば、いつかうまくなるよね」

 村の中とかで何度か使って、見つけたものまでの距離が解るようになれば強力な武器になるだろうから、これからは魔法や武器の練習のほかに、この探知の練習も日課にしようと僕は誓った。

 練習すると決めたからにはその日から始めるのが一番、どうせ今日はこれ以上頑張っても何も獲れないだろうから、これから村に帰って索敵の練習だ! そう思った僕は村へ帰ることにした。

「そうだ、どうせだからむらにむかってまりょくをとばしてみよ」

 結構歩いたし、ここから村までは1キロちょっとはあるだろうから村に向かっている間に何度か魔力操作をすれば波が帰ってくるまでの時間で、ぼんやりとでも距離が解るようになるかもしれない。
 そう思った僕は、早速周囲の魔力を操作して飛ばしてみた。
 ところが。

「あれ? かえってこないや」

 待てど暮らせど魔力の波は帰って来ない。
 でもまぁ、飛ばしている範囲は僕が両手を広げたくらいの幅で、なおかつ直線で飛ばしているんだから、もしかしたら誰もいないところを通っただけかもしれない。

 そう思った僕は100メートルほど進んでから再度、今度は少しだけ扇状になるようにして飛ばしてみた。
 今度こそ帰って来た時間を調べるぞって思っていたのに、なぜか今回も何の反応も返っては来なかった。

 こうなると僕はちょっとだけ慌てだす。
 村に誰もいないなんて事は普通ありえないのに、何の反応も返って来ないと言う事はもしかして何かあったんじゃないかって。

 だから僕は駆け出しながら何度も魔力の波を村に放つけど、結果は変わらず無反応。

「おかあさんや、きんじょのおばちゃんたちはいるはずなのに」

 あせる心を抑えながら僕は一生懸命走る。
 村には僕より強い人たちが一杯いるんだから、何かが起こっているとしたら僕が駆けつけても何の役にも立たないかもしれない。
 でも、走らずにはいられなかったんだ。

 そして遠くに村の周りの柵が見え始めた頃。

「へっ!?」

 放ち続けていた魔力の波に反応があった。
 そして更に進むと帰ってくる反応が増えて行く。

「あれれ?」

 なんか変だぞ。
 見た感じ、僕が今いる位置から村の柵までの距離は300メートル程で、その付近には人影はない。
 と言う事はこの返ってきている反応はそれより遠くにいる人たちと言う事で……。



 なんとなく解ってきた僕は走るのをやめ、ゆっくり歩きながら魔力操作を繰り返した。
 そして解った事はと言うと。

「このほうほうでわかるのって、もしかして400メートルくらいさきまで?」

 どうやら凄く遠くまで解ると言うのは僕の勘違いだったみたいだ。
 間違いに気が付いた僕はホッとするやら恥ずかしいやら、でもいつもの平和な村がなんかとても嬉しくて、満開の笑顔で村の門をくぐって家へと帰って行った。



 後日解ったこと。

 あの日解ったとどく範囲から、多分あの時は偶然獲物が反対方向に走って行ったのだろうと考えた僕は、その次の日から魔力操作での索敵を繰り返した。
 ところが魔力の波に反応があったからと駆け出すと、いつもそこには何もいない。
 それも一度や二度の事ではなく、何日もそんな日が続いたんだ。

 そんな事を繰り返している間も村での練習は続けていたから、やがて返ってくる反応でなんとなく遠いか近いか位は解るようになってきたんだけど、反応が近い時でも僕が駆けつけるとそこにはいつも何もいなかったんだ。


「おかあさん。ぼく、まりょくでどうぶつがどこにいるか、なんとなくわかるようになったんだ」

「あらルディーン、動物のいる場所が解るようになったの? 凄いわね」

 いくら探知しても獲物の影も見ることができない日が続いて、どうしたらいいのか解らなくなってしまった僕。
 その日も収穫は0でうなだれながら家に帰ると、お母さんとお姉ちゃんたちが台所で夕食を作っていたから、どうしてなのかをお母さんに聞いてみることにしたんだ。
 本当はお父さんに聞くほうがいいのかもしれないけど、まだ帰ってきてないしお母さんも狩人のジョブ持ちだから狩りのことには詳しいだろうからって。

「だけど、いそいではしってくと、いつももういないんだ。どうしてだとおもう?」

 藁をも掴むような気持ちでお母さんにそう問い掛けたんだけど、そんな僕の言葉に反応したのは質問されているお母さんではなく、その向こうでお手伝いをしていたレーア姉ちゃんとキャリーナ姉ちゃんだった。

「あらルディーン。走って近づいちゃダメよ。動物は臆病だから、誰かが走ってきたら逃げちゃうもん。ルディーンだって、誰かが棒を持って追っかけてきたら逃げるでしょ? それと同じよ」

「そうだよ。狩りの時はしずかにしないと、えものがにげちゃんうんだよ」



 こうして僕の悩みは、あっさり解決する事となった。

「なんでこんなあたりまえなことに、ぼくはきがつかなかったんだろう?」

 そんな小さな自己嫌悪と共に、ね。


あとがき、と言うか報告



 1と8を少しいじりました。
 特に1はルディーンが転生者ではあるけど前世の記憶を思い出しただけで、本人はあくまでこの世界で生まれた子供であるというのを明文化した物なのでちょっと重要なものだったりします。
 後これからも、ちょくちょくいじるつもりです。
 読みにくかったり、言葉が変だったりするところを、後で気が付く事が多々あるので


 ボッチプレイヤーの冒険が完結したら、この作品は別の場所に投稿を開始します。
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